美と健康メンテナンス特集 / セラミドバリアー

第2弾 子供の時の肌ケアはアレルギー体質を改善する

特集 セラミドバリアーの第2弾のテーマは、「子供の時の肌ケアはアレルギー体質を改善する」。
第1弾ではアレルギーになる仕組みや皮膚の構造について解説しましたが、第2弾ではいよいよ今回の特集の目玉である、近年のアレルギー学会で注目されている最新の研究報告についてご紹介します。
生まれてくる子をアレルギーにさせないためにはどうすればいいのか?子供の出産を控える親御さん必見です。
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美と健康を学ぶ セラミドバリアー 子供の時の肌ケア

アレルギーになるかどうかは乳児期に決まる

特集第1弾で「アレルギー物質による免疫が一度作られると、元に戻ることはない」というお話を、アレルギー専門医からお聞きしました。またアレルギーになりやすい体質「アトピー素因」は両親や親族から引き継がれることが多いという悩ましい問題についても触れました。

Q.
では、アレルギーをもつ親から生まれる子がアレルギーに悩まされるのは防げないのでしょうか?もう諦めるしかないのでしょうか?
A. 荻野先生の写真

荻野先生

いえいえ、そんなことはありません。確かにアトピー素因には生まれつき個人差がありますが、最終的にアレルギーになるかどうかは、生後約半年間の生活環境で決まります

体内の免疫システムは生まれつき備わっているわけでなく、生まれた後の生活環境を通して獲得していきます。
つまり、免疫がまだ作られていない乳児期に、正しい知識によるアレルギー予防をしておけば、アトピー素因を持って生まれてきた子でもアレルギーの発症を防げるのです。そして、免疫を獲得しやすい幼児期にアレルギー反応を防げれば、その後大きくなってからもアレルギーを発症しにくいことが分かっています。

「三つ子の魂百まで」どころか、「半年子のアレルギー百まで」というわけです。

元気なこども

アトピーから始まる恐怖の「アレルギーマーチ」とは

生まれてすぐの生活環境により、アレルギーにかかりやすくなるかが決まるわけですが、どんな生活環境であれ、発症するアレルギーに順番があるというのはご存知でしょうか?

乳幼児期に皮膚から侵入したアレルギー物質により、まずはアトピー性皮膚炎や食物アレルギーに発症します。これらの症状が軽くなってきた3歳頃に気管支ぜんそくにかかり、気管支ぜんそくが治ってきた10歳前後に今度は花粉症にかかるという傾向があります。こうした成長とともに次々とアレルギー疾患が連鎖する「アレルギーマーチ」が起こってしまうと、大人になってからもアレルギーに悩まされることになります。

アレルギーマーチのきっかけは、まさに乳児期の生活環境によるものであり、しっかりと対策を講じれば防ぐことができます。

アレルギーマーチ

では、アレルギーマーチを防ぐために、アレルギーにかかりやすくなる生活環境について、解説していきます。

清潔過ぎる環境はアレルギーになりやすい?

生まれたばかりの赤ん坊は抵抗が弱いので、できるだけ清潔に保つべきと考える親御さんが多いと思います。
しかし、幼児期に細菌やウイルスに接触する機会が少ないと、アレルギーにかかりやすくなることがわかっています。

細菌やウィルス、花粉やダニなどが体内に入ってくると、これらを異物と認識し、やっつけようとして免疫反応が働きます。この免疫反応において、異物に攻撃の指示を出す司令塔の役割をするのが、白血球の一種であるリンパ球です。リンパ球は成長するにつれ、細菌やウィルスへの攻撃を指示する司令官とアレルギー物質への攻撃を指示する司令官に育つ道を選びますが、生まれたばかりの時はどちらの道を選ぶか決められていません。

もし兄弟がいてバタバタした家庭の中で育てられた場合は、細菌やウィルスを攻撃する司令官がより多く必要になりますし、逆に都会の清潔な環境で育った場合には、細菌やウィルスを攻撃する司令官の必要性が無く、その分アレルギー物質を撃退する司令官の割合が多くなります。

荻野先生

都内の会社に勤務する男女348人にダニやスギ花粉に対するアレルギー反応を調べたところ、50歳代で40%に満たなかったアレルギー陽性反応が、20代では80%近くの人に見られたという報告があり、清潔な環境で育った今の若者達の体内ではアレルギー対策司令官で溢れていることがわかります。こういった事実から、アレルギー疾患は戦後の急激な環境変化により引き起こされた現代病であるとも言えます。

では、逆に不衛生な環境で育て、細菌やウィルスに接する機会を増やせば、アレルギーになりにくくなるのか?というと、残念ながらそうとも言い切れません。というのも、司令官の割合が均等になることで、花粉症や気管支ぜんそくにはかかりにくくなるのですが、アトピーや食物アレルギーといったアレルギーマーチのきっかけになる疾患には、他にも原因があるためです。

なお、大人になってからでも埃っぽい環境で修業すれば、司令官の割合を変えられるのでは?考える方がいるかもしれませんが、残念ながら一度作られたアレルギー物質への受け皿(アレルギー抗体)がなくなることはありませんし、アレルギー物質が多い状況ではより症状が悪化してしまいます。アレルギーになってしまった後は、できるだけアレルギー物質の侵入を防ぐようにしてください。

乳児期の肌ケアがその子の将来を決める

赤ちゃんの肌はモチモチ、スベスベで羨ましい!と思われるかもしれませんが、その一方で新生児の皮膚は成人に比べて薄く、角層の水分量も少ないために、外部環境の影響を受けやすいというリスクがあります。

そんなデリケートな柔肌に対して、肌ケアをしないなんて、裸でジャングルの中を進むようなものです。家の中には、埃やダニの他にも、さまざまな食べかすがたえず飛散しています。こういった異物がバリアー機能の低い赤ちゃんの肌を通して体内に侵入してきます。

アトピー性皮膚炎を家族に持つ新生児118名を対象に行った国内の臨床試験において、1日1回全身に保湿剤を塗った新生児59人と、乾燥した箇所にのみワセリンを塗った新生児59人を32週にわたって比較したところ、全身に塗った新生児でアトピー発症者が19人であったのに対し、部分的に塗った新生児では28人がアトピーに発症しました。この結果から、新生児に対して予防として保湿剤を全身に塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上も低下することが分かりました。

さらに、同時期に行われた英米の臨床試験では、保湿剤を塗った群のアトピー発症率が55人中12人だったのに対し、保湿剤を塗らなかった群では倍の23人がアトピーに発症したことから、保湿剤で肌ケアをすることでアトピー性皮膚炎にかかる率が5割低下したことが確認されています。

アレルギーマーチをスタートさせるアトピー性皮膚炎を防げるということは、子供のその後の人生のアレルギーリスクを大幅に下げることに繋がります。アレルギーに反応する抗体が作られる期間は生後6ヶ月までが重要とされています。生まれてからほんの半年間、全身の肌ケアをしておけば、アレルギーになりにくい体質になるなんて、そんな簡単なことはありませんよね。今後出産するご予定のあるご両親はぜひ覚えておいてください。

アレルギー予防法のそれ本当??

本テーマの最後を飾るのは、子供がアレルギーに掛からないために、巷で「効く」と噂されるアレルギー予防法の真偽についてです。

噂その1「妊娠中にアレルギーになりやすい食事を制限すれば、生まれてくる子もアレルギーになりにくい?」

親子

妊婦さんがアレルギーを発症しやすい食事を制限するなどした研究はこれまで多くやられてきましたが、いずれも明確にアレルギーの発症予防ができたという結果はありません。日本小児アレルギー学会のガイドラインにおいても、「妊娠中、授乳中の母親がアレルギー食品を避けることは、食物アレルギーの予防策として勧められない」と発表しており、妊娠中・授乳中においてはむしろ偏食を避けるべきとされています。

噂その2「アレルギー食品を食べたことが原因で、食物アレルギーになる」

子供の時に卵や牛乳、蕎麦、小麦などのアレルギー食品を食べたときに、身体に合ってなくてアレルギーにかかった。そう考えている方が多いのではないでしょうか?実はこれは大いなる間違いであり、むしろアレルギー食品を食べることで免疫は強化される可能性があります。

腸には、食べていいものと食べてはいけないもの(病原菌などの異物)を見分ける力が備わっており、身体の維持に必要な栄養には免疫が過剰に反応しない「免疫寛容」と呼ばれる機能があります。このため、食品として口から摂取したアレルギー物質にはアレルギー反応が起こりにくいのです。一方、皮膚から侵入した空気中の食べかすは、この免疫寛容が働かないため、完全に異物と判断され、過剰なアレルギー反応を引き起こします。

例えば、イギリスではピーナッツアレルギーに悩まされる乳幼児が多くいることから、ピーナッツを一切食べさせなかったらアレルギーの発症を防げるかという試験が行われました。しかし、ピーナッツを一切食べない群321人で4年後の発症率が17.3%であったのに対し、少量のピーナッツを週3回以上食べた群319人では発症率3.2%と、ピーナッツを食べていた方がアレルギーにかかりにくいという結果になりました。

この試験でピーナッツを一切食べないという発症予防法は失敗になったわけですが、この研究グループが凄かったのはここからです。ピーナッツアレルギーを発症した49人を追跡調査したところ、その91%がピーナッツオイルを含んだベビーオイルを使っていたのです。以上の結果から、食物アレルギーは食べ物からではなく、皮膚から起こる可能性があるという仮説が立てられ、最新の研究結果からこの仮説はほぼ正しいと証明されました。

日本においても、2004~2010年にかけて460万人に販売された「茶のしずく石鹸」を使用し、2078人(2013年12月時点)が小麦アレルギーになったという事件が起こりましたが、これも皮膚から吸収された石鹸に含まれる小麦成分を異物と認識し、過剰な免疫反応が働いたためと考えられています。

噂その3「アレルギー予防にはヨーグルトが効く」

食べたものに対して、必要な栄養には免疫寛容という機能が働くため、アレルギーにならないということをお話しました。その一方で、病原菌などの吸収されて困るものに対しては排除する機能が働きます。この機能を担っているのが、小腸の「腸管免疫」という防御システムです。

ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌が、この腸管免疫を活性化させることは知られていますが、それが食物アレルギーに直接繋がるかどうかはまだ明らかになっていないのが現状です。同様にヨーグルトを食べることで、アレルギー症状が改善することを証明した質の高いエビデンスも実は存在しません。

腸を健康にする目的でヨーグルトを食べるのはよいことですが、アレルギーの改善や予防のために食べるという考えは現時点では科学的に正しくないと言えます。

まとめ

荻野先生

セラミドバリアーの第2弾特集として、子供がアレルギーにならないためにするべきことを解説してきました。
大事なことは、生まれてから半年間の間、毎日しっかりと保湿剤(セラミドなどの肌の保湿を高める成分が入っていればなおよい)を全身に塗り、子供のデリケートな肌を守ってあげるということです。そうすれば、両親がアトピー素因を持っている元来アレルギーになりやすい子でも、アレルギーにならないもしくは重症化を防げる可能性が高まります。
そしてあまり清潔に気を使い過ぎず、アレルギーになりやすい食品も含めて偏食にならないように食べさせましょう。
(既にアレルギーになってしまっている場合は、無理に食べさせてはいけません。)

そうすることが、現代病であるアレルギー疾患から、我が子を守ることに繋がります。

次回は、セラミドバリアーの最終章、セラミドを「塗る vs 飲む」本当はどっちがいいの?論争に終止符を打ちます!

セラミドバリアー特集のシリーズ

この記事の監修者

大阪大学名誉教授 荻野 敏先生
大阪大学名誉教授荻野 敏先生
  • 大阪大学医学部卒業後、1995年から2013年まで同大学医学部で教授を務め、現大阪大学名誉教授。耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー疾患の診断・治療のスペシャリストとして、アレルギー関連の臨床試験において850本以上の文献に名を連ねる。疫学的研究や医療経済学への知見も深く、消費者のライフサイクルに健康食品を組み込む術のアドバイスも行っている。

参考文献

  • 斎藤 博久著, Q&Aでよくわかるアレルギーの仕組み, P.61, 2015年12月20日初版, 株式会社技術評論社発行
  • Saito H. Translation of human genome into clinical allergy. Allergol Int (2003)52; 65 -70
  • 川尻康晴ほか:日小皮会誌, 12:77,1993
  • Horimukai K, Morita K, Narita M, et al : Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis, J Allergy Clin Immunol, 134 : 824-830, 2014
  • Simpson EL, Chalmers JR, Hanifin JM, et al : Emollient enhancement of the skin barrier from birth offers effective atopic dermatitis prevention, J Allergy Clin Immunol, 134 : 818-823, 2014
  • N Engl J Med 2015; 372:803-813
  • 斎藤 博久著, Q&Aでよくわかるアレルギーの仕組み, P.138-140, 2015年12月20日初版, 株式会社技術評論社発行